それでも、父は何度も電話をかけてきました。
「母さんが…本当に様子がおかしい」
「お願いだから、少しだけでも帰ってきてくれないか?」
普段は感情をあまり表に出さない父。
そんな父が、繰り返し“お願い”をしてくる。
その声を聞くだけで、胸がざわついていたのを覚えています。
私はずっと、“まだ大丈夫だろう”と思うようにしていました。
仕事もあるし、自分が行っても何ができるのかと、
どこかで見て見ぬふりをしていたのかもしれません。
でも、このときばかりは違いました。
父の声の奥に、どうしようもない不安が感じられました。
「ああ、これは…ただごとじゃない」
初めて、本当に“何かが起きている”と実感しました。
重い腰をあげて、新幹線の切符を取りました。
そして今までにない感情、
「恐怖」、「憂鬱」、がリアルに出てきて
気付いたら、スマホを持つ手が少し震えていました。

コメント