《遠距離介護の始まりは、1本の電話から》

介護と心の記録

「母の様子が…おかしい」

2020年のある日。
私のもとに、父から珍しく電話がかかってきました。
普段はめったに電話なんてしてこない父。

着信を見た瞬間、「どうしたんだろう?」と少し身構えたのを覚えています。
電話を取り、父の声を聞いた瞬間、胸がざわっとしました。

「母さんが…ちょっとおかしい。」
「フラフラしてるし、表情もどこか変で…なんか、様子がおかしい」

そのときの私は、正直ピンと来ませんでした。
あの元気な母の姿からは、どうしても想像ができず、

「また少し大げさに言ってるんじゃないかな」

そんなふうに、どこか他人事のように受け止めていたんです。
心のどこかでは、
「もし本当に深刻だったらどうしよう」という不安がありながらも、
きっと私は――現実から目をそらしたかったんだと思います。

「大丈夫でしょ」
そう父に言うと同時に、
自分にも言い聞かせるようにして、電話を切りました。

今、あのときを思い返すと、
父の声には確かに、“いつもと違う何か”が宿っていた気がします。
気づいていたはずなのに、気づかないふりをしていた。

あの日からすでに、母の変化は静かに始まっていたのかもしれません。

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